みなさん「5G」って聞いたことありますよね。 私たちの生活や産業を大きく変える可能性を秘めた、次世代の通信インフラとしてのイメージを持っていらっしゃる方も多いかと思います。
5Gは、超高速・大容量・低遅延で多デバイス接続が可能な次世代型の通信規格として、大変期待されている通信技術です。もう何年も前から通信キャリア各社はこの夢のような技術を実現するべく、取り組みをすすめてきました。
しかし、これだけ騒がれている話題の技術なのに、実は5Gの導入や活用が日本国内では当初予想されていたほど進んでいない現状があることはご存じでしょうか。
実は、それにはいくつかの理由があるのですが、今日はそのことと、その問題を解決するかもしれない新たな技術であるOpen RANについて少し話してみたいと思います。
5Gに起きた予想外の事態と課題
日本国内では2020年にNTTドコモが5Gをいち早く商用化したのを皮切りに、各社一気に5Gの提供を開始し、いよいよ高速ネットワークの世界がくると期待されていたのですが、2024年末現在、その普及や活用は思ったほど進んでいません。なぜなのでしょう。
実は5G専用電波は速度が速い反面、伝達範囲が狭いため、既存のネットワークより多くの基地局や設備投資が必要という少しやっかいな問題も抱えているのです。それでも通信キャリア各社はこの夢の技術に投資することで、将来的なビジネスの拡大を狙っていました。しかし、そうした期待に反して、青天霹靂のような予想外の事態が発生したのです。
そうです、それが2020年から始まった日本政府による通信料金の大幅な値下げです。この政策により、通信キャリア各社の収益が大幅に減少し、新たな5G設備の設置や基地局の増設に対する投資が慎重にならざるを得なくなったといわれています。消費者にとってはうれしい政策だったのですが、思わぬところで影響が出てしまいました。
もちろん、それだけではなく、その他にも、5Gの普及が進まない要因がいくつか挙げられています。
5G普及が進まないさまざまな理由
例えばよく言われるのは、ストリーミングによる動画再生が発達した昨今、ユーザーが日常生活を送る上では4GやWi-Fiで十分なため、5Gならではのキラーコンテンツといったコンシューマー向けサービスがまだ登場していない点です。
さらに、5Gの恩恵を最も受けると期待されているのはスマートフォンではなく、IoTや自動運転車といった分野といわれていいますが、これらの技術の普及も国内ではまだまだ進んでいません。
5Gの普及がいまいち進まない理由をまとめてみると、以下になります。
- 伝達範囲が狭いため:5Gは伝達範囲が狭く、多くの基地局が必要で、インフラ整備が遅れています。
- 高周波数帯域を使用するため:多くのアンテナが必要で、初期投資費用が高くなります。
- 通信料金の値下げによる収益減少のため:キャリア各社の収益が減少し、設備投資に慎重になっています。
- キラーコンテンツが不足しているため:現状のサービスは4GやWi-Fiで十分なため、5Gならではのコンシューマー向けサービスがまだ登場していません。
- IoTや自動運転車への期待が高いため:5Gの恩恵を最も受けるのはスマートフォンではなく、これらの分野ですが、そもそもIoTや自動運転車の普及が国内ではまだまだ進んでいません。
いかがでしょうか。
こうしてみると、なんとか解決策がないかと思うのですが、実はそれを解決するかもしれない鍵となる技術がこの後ご説明する「Open RAN」なのです。
Open RANの可能性と5G
このように5Gの普及がなかなか進まない状況を改善するために、Open RANが注目を集めています。
Open RANは、無線アクセスネットワーク(RAN)の構築において、ハードウェアとソフトウェアを分離し、異なるベンダーの機器を相互運用可能にする技術です。これにより、通信事業者は特定のベンダーに依存せず、柔軟かつコスト効率の高いネットワークを構築できると期待されているのです。
ではOpen RANのメリットについてみていきましょう。
Open RANのメリット
- 柔軟性の向上: Open RANは、標準化されたインターフェースを使用することで、異なるベンダーの機器やソフトウェアが相互に連携しやすくなります。これにより、通信事業者はニーズに最適な技術を自由に選択し、迅速にネットワークを拡張または変更することができます。
- コスト削減: Open RANは、ネットワーク機器の調達におけるベンダー依存を減少させ、より競争的な市場を形成します。結果として、ハードウェアとソフトウェアのコストが低減され、通信事業者は全体的な運用コストを削減することが可能です。
- イノベーションの促進: オープンなアーキテクチャにより、新興企業や小規模ベンダーも市場に参入しやすくなります。これにより、新しいアイデアや技術が市場に導入され、通信技術のイノベーションが加速します。
いかがでしょうか。Open RANが5Gの普及を手助けするための強力な技術であると言える十分な理由になるのではないでしょうか。
実際に日本の主要キャリアは現在Open RANの導入を積極的に進めていいます。
各キャリアのOpen RANへの取り組み
NTTドコモ
NTTドコモは、5G以前から親局と子局との間のインタフェースを独自に規定することでマルチベンダネットワークを実現しました。2020年には、O-RAN ALLIANCE準拠のインタフェースを用いたオープンRANを世界で最初に商用網において実現しました。ドコモは、O-RAN ALLIANCEの設立メンバーとしても積極的に活動しています。
KDDI
KDDIは、Samsung Electronicsと富士通の協力のもと、2023年1月に大阪市内でO-RAN標準インタフェース準拠の5G仮想化基地局の商用展開を開始しました。Zero Touch Provisioningシステムにより、設定作業を自動化し、迅速な基地局展開を可能にしています。KDDIは、Open RANの導入により、コスト削減と柔軟なネットワーク構築を目指しています。
ソフトバンク
ソフトバンクは、日本電気(NEC)およびVMwareと共同で、仮想化されたRAN(vRAN)のシステムを検証しました。これにより、ネットワークオペレーションの共通化や効率化が実現され、スケーラブルなRANシステムの構築・運用が可能となりました。ソフトバンクは、Open RANの導入により、競争力のあるサービスを提供しています。
楽天モバイル
楽天モバイルは、Open RAN技術を積極的に採用し、完全仮想化クラウドネイティブなネットワークを構築しています。AIを活用してネットワークの運用を最適化し、運用コストの削減とユーザーエクスペリエンスの向上を実現しています。楽天モバイルの取り組みは、他のキャリアに対しても大きな影響を与えています。
世界の動向と将来性
Open RANは日本だけでなく、世界中で注目されています。例えば、ヨーロッパの通信事業者は自社の4Gおよび5GネットワークにOpen RANを導入し、ネットワークの柔軟性を高めています。また、アジアの新興市場では、低コストでのネットワーク構築の解決策としてOpen RANが選ばれています。北米でも商用ネットワークにOpen RANを導入し、市場の競争を活性化させています。
社会的・経済的影響
Open RANは、通信インフラが未発達な地域においても、低コストでのネットワーク構築を可能にすることで、デジタルデバイドの解消に寄与しています。これは、経済発展において重要な役割を果たし、さらなる社会的、経済的利益を生み出す潜在力を持っています。
まとめ
5Gの導入が思ったほど進んでいない現状を打破するために、Open RANの重要性がますます高まっていることについてお話させていただきました。通信キャリア各社は通信料金の大幅な値下げにより、レガシー的な設備を維持するのは困難になってきており、いかに低コストで設備を拡張していけるかが、今後の事業継続ののキーとなっています。
実際に各キャリアがOpen RANを導入し、成功を収めている事例は、Open RANが今後の5Gの普及を手助けする有効な手段であることを示しています。
特に楽天モバイルは、Open RAN技術をコアに据えたネットワーク構築を進めており、5Gの導入に対しても積極的Open RAN技術を活用していくことを公言しており、こうした取り組みが他のキャリアに対して有利に働く可能性があります。
世界中で進行中のOpen RANの導入事例や将来性にも注目しながら、通信業界の未来を楽しみにしましょう。
興味を持った方は、ぜひ各キャリアの最新の取り組みをチェックしてみてください。Open RANがもたらす未来に期待しつつ、私たちの生活がどのように変わるのかを楽しみにしましょう。
それではまた。See you~